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「見てたのか?」
「昨日、あの子があんまりうれしそうだったから、カメラの記録を見ちゃったの。あれは恋よ」
「わかってるさ」
「恋敵に勝てるの?」
「俺はあいつとは戦わないよ。俺が戦うのは時間さ」
「時間?」
「俺が女と駆け落ちして高校退学になったの知ってんだろ。親から引き離されてそれっきりになってたのがさ、この前たまたま見たんだよ」
「会ったの?」
「いや、見かけただけさ。どうしてたと思う?」
「・・・さあ」
「結婚したんだろうな。小さい子供を連れて、真面目そうな男と一緒に歩いてたよ。俺といっしょにいられないなら死ぬなんていうから、家を出て大阪まで行ったんだけどなー。あれはもう俺のことなんか忘れてる。まちがいない。」
「悲しいわね。そんな相手から忘れられるなんて。あたしだったら焼き付けるくらい思い出させてやるのに」
マドレの目がふたたび異様な輝きを帯びてきた。
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