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リュウセイはいったん言葉を切って、手元の免許証を見た。『白井 由紀』と名前がついている。きっと「お兄ちゃん」のセンスだ。あいつはほんとにひねりがない。
「白井由紀か」
「そう。白井由紀。シラユキじゃないなんて、変な感じだわ」
「すぐに慣れるさ。時間なんだよ。結局どれだけ長く過ごすかなんだよ。俺と一緒に白井由紀になればいいんだ。何も言わずに引き離してしまえば、だんだん忘れてく。そんなもんだよ」
「そう。だったら、シラユキを頼むわ。あの子をおいていかないで」
「任せろ」
リュウセイはマドレの部屋を後にした。大丈夫。俺はどこにでも流れていって、そこで生きてきた。きっと、大丈夫だ。
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