栞と金貨

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幸村くんってホントに目立つ人で。 わたしが3-Dに転校してきて自己紹介した日に、突然こう言った。クラス全員の前で。 「佐々木智子(ともこ)さん、僕と付き合って下さい。惚れましたッッ!」 ただでさえ、緊張していたわたし、モミジのように真っ赤に染まった。 「・・・からかわないでください」 やっとのことで、消え入るような声で答えた。 「ちぇっ、本気なのになぁ。あきらめないから、そこんとこ、よろしく」 わたしの両手をぎゅっと握り締めて、見つめてくる。 ヒュー、ヒューヒュー、男子たちの冷やかす声。。。 「ん、ん、ん、佐々木、ご愁傷様だが、君の席は一番後ろ、幸村 明の隣だ。席に着くように。授業を始める」 え~っ?真っ赤に染まったまま、しぶしぶ席に着く。 幸村くんが、教科書を見せてくれる。ち、ちかいっ。顔が近いよ。 「・・・やっぱり、覚えてないんだなぁ、智ちゃん」 「えっ?」 「いや・・・これ見ても思い出せない、かな?」 色褪せた厚紙で作った大きめの栞。モミジの押し花、「あきらくんげんきでね」のつたない文字。これは・・・これを作ったのはわたしだ。
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