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その日は、結局明くんにわたしの記憶を話すことは出来なかった。あの金貨を持って、わたし、ちゃんと返事するんだ。すぐに思い出せなくてごめんね、って言葉も添えて。
「ただいま~!」
「お帰り、智子。新しい学校はどうだった?」
「信じられる?明くんに会ったよ。覚えてる、明くん」
「もちろんよ。明くんママとはずっと連絡取ってたし。あの高校の編入試験受けさせたのも明くんと再会させるためだったし」
「マ~マ~。わたしに内緒で」
「だって智子、明くんのことすっかり忘れてるみたいだったし」
う…っっ。確かにそうだけど。
「思い出したからっっ。ね、明くんから金貨、もらったでしょ?」
「あぁ。私が巾着縫ってあげてそれに入れて。小学生の間はランドセルに付けてたけど・・・そのあとは知らないわ」
「ありがとっっ!」
「頑張って探しなさい!『婚約の品』なんでしょ?」
ぼっ!またわたしの頬は真っ赤に染まる。
「・・・なんでそこまで覚えてる・・・」
「明くん、凛々しくなっただろうなぁ」
「ママったら・・・」
まぁ、いい。とりあえず、金貨、金貨。
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