僕らはみんな生きている

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僕らはみんな生きている

「さあ出来た。 そっち準備はええか?」 亮介さんの家の庭に尻上がりのユキさんの声が響く。 最っっ高の陽気に包まれた8月上旬、 戸という戸を開放した東野邸の縁側には 幾つもの大ザルに盛られた素麺がどんと置かれた。 どこから調達したものか、何本かでクロスさせた竹の上に、やはり縦割りにして節を取っただけの長い竹が勾配をつけて据えられている。 それは縁から庭の端まで敷地を半分に仕切っていて、高さのある側には散水栓から引いてきたホースが繋がれ、低くした方には空のザルとバケツ、その下は排水溝へと続くよう固定されていた。 ワイヤーで竹と竹を補強している柏木さんが額の汗を拭いながら応じた。 「いいよ。 汰士(たいし)、水流してみて」 ユキさんの彼氏でこの家の主でもある亮介さんは、サイドテーブルやら背もたれのない丸椅子を竹の真ん中から下にかけて両脇に並べる作業、コンシェルジュの野々山さんは縁の端で鍋から様々な大きさの器に麺つゆを配している。 先に受けザルとバケツのセットまでを終えた結城さんは庭石の上でタバコを(くゆ)らし、秘書のキリルさんは縁の上でスタンバイ、俺はそれぞれの助手として忙しなく屋内と庭を行き来していた。 「はいはーい、いきますよー!」 俺が蛇口をひねると、ホースから流された水は太陽の光を浴びながらキラキラと揺れ、一本の竹を半ばまで満たしながら流れ下った。 「ばっちり〜っ」 全ての準備が整った頃、 「買って来たぞ」 大玉のスイカをバスケットボールのように担ぎ持った水無月さんが門から庭に入って来た。 そう。 今日は俺の念願である、流し素麺大会の日なのだ。
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