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それからふと俺は、
横に立っている『お付き合いの相手』を改めてまじまじと見上げた。
「柏木さんはさ ───
つるつるの塗り箸だろうと何だろうと食べるよね。
流れるそうめんのどこに箸をどれくらいの角度で差し入れるか、とか考えて。
諦めないで、どうにかして絶対食べると思う」
言いながら、俺だって始めはそんな柏木さんと同じ気持ちだった事を思い出していた。
「柏木さん、俺自分に言い訳するのやめた。
拗ねグセとか甘ったれ気質はすぐには治らないかもだけど、、、
できなかったことを人のせいにしない。
ただ、、、」
イジリといけずには とことん抵抗してやる。
「拗ねるも甘えるもいいんだよ。
そこは汰士の大事な大事な個性だからむしろ生かしてあげて欲しい。
そうすれば、
あたふたしたり、怒ったり、屈託なく笑う姿を見たいがために君を構いに来る彼らの個性も認めてやれるだろ?
揺すり揺すられて日々を送る。
それが人間が社会で生きてるって事なんだと、僕は思うから」
柏木さんは皆の方に顔を向け、そして俺へと視線を戻し、ふっと笑った。
「嫉妬を自制するのは大変だよ。
余程の事でない限り、彼らにも汰士にも干渉してはいけないと日々自分に言い聞かせている」
そうして大きく息をついた後、少しだけ苦しそうに俺を見つめた。
「出会った時から命懸けで惚れてるんだけどな、僕は君に。わかってないだろ」
「、、、柏木さん」
─ こんな人いる?
曲がりそうな俺の心の動きに一早く気がついてくれて、スポットで手を差し伸べ、黒くなりかける気持ちを修正してくれる。
変な束縛はしないけど愛情は誰よりも濃くて深い。
なんて魅力的なんだろ。
柏木さんは俺の人生の師匠だ。
『お付き合いの相手』なんてもんじゃない。
生きる上での手本そのもの、最高のパートナーだ。
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