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その後、
皆がそうめんの取り方をやいやい指南してくれる中、俺は流しそうめんを、
その後ユキさんの冷しゃぶを堪能した。
食べ終わる頃には案の定、腹に余裕のある皆の為に亮介さんが、
『スイカを食った後は休憩を挟んでバーベキューの準備を始めよう』と提案した。
スプリンクラーが午後の熱風を少しだけ和らげ、目に涼しさを与えてくれる。
そして、冷やしたスイカをカットする段になると、凝りもせず俺は真ん中の甘い所を狙って前にしゃしゃり出たし、一同面々は食いながら俺を構ってきた。
「わざとこっちに種飛ばさないで下さいよっ、みなつきさんっ。
顔についちゃったじゃないかっ」
だとか、
「結城さんてばっ、勝手に人のスイカに塩かけるの止めて下さいってっ」
みんな依然として俺がギャーギャー騒ぐのを楽しんでる。
「旨いな」
「ああ、旨い」
「美味しいですねぇ」
「ヨーグルトと一緒に召し上がってごらんなさい、もっと美味しいですよ」
「旬のものやからなぁ」
一人で食べるそうめんも、豚しゃぶも、スイカもきっと美味しいよ?
だけどね、きっとここにいる面々の個性あっての旨さはなんでか別なんだよね。
「あー美味かったぁ〜」
縁側に身体を倒して寝転がると、満腹と心地よい風が俺に目を閉じろと囁いた。
「畳に上がって寝たらどうですか汰士さん」
「いいのいいの野々山さん、こいつは昔っからこうだから」
「そうなんですよ、亮介さん。
汰士はどこででも昼寝できるみたいで」
「そんな優しい目ぇして。
もの好きなお人やなぁ、柏木さんは。
こんな子供みたいな汰くんのどこがええんやろ」
周りの雑音は心地いい音に変わり、それも徐々に遠くなってゆく ───
ありがとうみんな。
なんだかんだと ちょっかい出されても、俺は一人一人のことが美味し、、、いや、好きだよ。
あ、そういえば、、、
今日集まったこのメンバーの中に、実は俺をストーキングしていた犯人がいる。
散々な目に遭ったわけだけど、俺にはその人をついに最後まで恨むことはできなかったし、今もできない。
彼が今日ここに居ることを許してる、柏木さんの理由にはびっくりするけど。
それで犯人が誰かってことなんだけど、それはここでは言わないでおく。
消化に悪いからね。
けどもしも、
もしも興味があったら別の作品の中にいるから探してみて欲しい。
そこにも俺なりの、
『おいしい時間』てのが散らばっているからさ。
── 今回の話はここまで。
みんな、読んでくれてありがとう。
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