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「先に野菜食べちゃったらさ、せっかくの肉の旨さが半減、、、」
「ごちゃごちゃ言ってないで、とにかく食ってみろ、野菜も旨いから」
「もう、、、」
自分は先に肉食ってるから言えるんだよ、それ。
仕方なく俺は肉汁を吸っただけの甘辛い
ネギと春菊を先に卵にからめて食べた。
が、
「う、うまっ」
悔しいけど、
膜のような卵の蛋白を舌に感じた途端、少し芯の残る野菜の表面に絡む牛脂の旨味と甘辛い濃厚タレがふぁぁっと口中に広がった。
火を通し過ぎない野菜の歯ごたえと併せて旨いことったら。
「んん~ま〜」
飲み込むのが勿体ないくらいだ。
「だろ?」
亮介さんは笑いながら、
「俺も すき焼きは『わりした』から作るものだと思ってたからザラメ糖と醤油で焼くってのは衝撃だったよ」
「すき焼きはあくまでも『焼き』。
なのに肉を煮るなんて。
こうして肉を焼いて、その肉汁で野菜を炊いて交互に食べるのがすき焼きだよ」
ユキさんは野菜も汁も無くなった鍋に再び肉を入れて言う。
確かに一理ある。
「けど関東では『わりした』を使って肉も野菜も一緒にぐつぐつ煮、、、」
「それは『すき煮』だろ?」
「違うよ、それだって立派なすき焼きだよ! ユキさんはいつもそうなんだ、俺が、、、」
「いい加減にしろ汰」
「だって、、、っ」
「しつこい」
「うぅ〜っ」
これってさ、、、
兄弟喧嘩でよくあるシチュだと思う。
どっちが悪いとか抜きにして、声がデカくて主張が目立つ方だけ怒られるって理不尽なやつ。
「もう、やめやめ。 な?」
俺だけが怒られて機嫌の良い いけず美人は他人事のように柔らかな笑顔を傾けて火力を調節してる。
、、、別に。
別にいいもんね、俺の機嫌は松坂牛がとってくれるから。
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