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第1話
チャイムが鳴った。
「今日の授業はこれで終わります」
「起立、礼」
「ありがとうございましたぁ」
俊太は廊下に飛び出し階段を駈け下りる。
「あれ?帰るのか?」同級生の健一郎が声をかけてきた。
「ちょっと急用」
俊太は振り返りもせず、下駄箱に向かった。
「なんだよ、遊びに行こうと思ってたのに」
俊太はそれには答えず、ズックを引き摺りながら携帯電話を取り出した。
5回のコールのあと、留守番電話になってしまった。
「お父さん!雨が降りそうだよ。布団大丈夫?」
留守番電話へ叫ぶように録音後、急激に暗雲が立ちこめてきた空模様を不安そうに見上げると、一目散にマンションへ駆け出した。
暗い上に風が強く吹いている。
なにが、今日は休みだから任せておけ、だよ。
まったく―。
俊太は風に逆らうように走りながら、今朝のことを思い返した。
続く
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