pure white

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 染まってしまえば、楽なのに──。  周りの若造どもは、儂の気持ちも知らずに軽々しくそんなことを口にする。  意地を張ってる、しょうもないこだわりなんて捨ててほしいなどと、陰口までたたく始末。  全部聞こえておるわ、まったくけしからん。  儂は自然に身を任せ、月日の流れに身を委ね、ありのままに生きておるだけじゃ。  最近の若造のように、誰かの気分次第でできたような、しょうもない流行の色に染まるような、そんな真似はせん。  誇りを胸に、この地に立っているのじゃ。  大体、最近の若造ときたら芯が弱い。  腰抜けばっかりじゃ。  そりゃ儂にもそんな時期はあったが、この生き方を貫くと決めた時から、しっかりと地に足を付け、吹く風にさらされながらも力強く生きてきた。  根を張っておるのじゃ。  この豊かな黄土色の大地に、深く根を張っておる。  若造どもは所詮、たんぽぽや、ひまわりのようなもの。種をそこら中に残し、月日が流れれば好き勝手に芽吹き、何ごともなかったようにきれいに生え変わる。  儂は言うなれば、白梅(しらうめ)じゃ。  咲き誇りし白き梅の花。  たとえ折れても、そのたびに強く太く、大きな幹となる。花が散っても、時が来ればまた咲き誇る。  何年経っても変わることはない。  ありのまま、己を見失うことなく、この地で咲き続けるのじゃ。  まぁ良い。いずれは誰もがこうなっていく運命じゃ。  目まぐるしく変わる環境の中、何かに染まることに疲れる日がきっと来る。  その輪を抜けたくても抜けられない、葛藤も訪れる。  ついていけないことに対する羞恥心も付きまとう。    ありのままの、真っ白な自分でいたい。  そう思い、飛ばされることなくしっかりと根を張って、己を貫きながら生きて行くことに憧れる日が来るのじゃ。  耳に届くかどうかはわからんが、言っておかねばな。  若造よ、その時は思い出してほしい。  それは、決して恥ずかしいことではない。  周りから浮いたとしても、儂のように変に目立ってしまったとしても、白い心は、なによりも美しい。  流行の色にとらわれ、無作為に取り入れて、結局真っ黒になってしまい、また無理やりその上に色を重ねて。  それは本当に美しいのか、よく考えるのじゃ。  そして、誰にじゃってその奥深くには、真っ白な自分がいることを。やがてそこにたどり着くことを、決して忘れるでないぞ。  やがて巡ってくる時を、拒まずに受け入れる。  それだけのことじゃ──。 「桜井さん、これ、どうします?」 「え? あぁ、それね……」 
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