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心臓病の従妹(いとこ)
その日、F3の試験飛行の合間を使って従妹の秋月理紗のお見舞いに世田谷の帝国大学病院に来ていた。理紗はまだ十歳の女の子で私とは十五歳も歳が離れているけど、理紗のお母さんの百合叔母さんには小さい頃にも良く遊んで貰っていたこともあり、私も理紗ととても仲が良かった。でも彼女は半年前に心臓病を患い入院してしまった。
それからは時間が有れば、彼女のお見舞いに行っている。
帝国大学病院の入院棟に行き、受付を終えて振り返ると、廊下を目を腫らした百合叔母さんが歩いて来た。
「叔母さん、どうしたの?」
私を見ると彼女は唇を噛み締めた。
「……理紗はもう心臓移植をしないと治らないんだって……」
その言葉に驚きを隠せなかった。
「えっ? だって前聞いた時は薬物治療でいけそうだって……」
「……そうね。でもその後、理紗の拡張型心筋症は物凄いスピードで悪化しちゃったの……。もう数カ月で心臓が機能しなくなるって……」
「……そんな。でも移植希望者の登録しているのよね。提供者は直ぐに見つかりそうなの?」
彼女が大きく首を振る。
「日本では子供の心臓提供者は殆ど居ないんだって。アメリカに行けばもう少し数が増えるけど……。でも理紗の場合は……」
「……何か問題が?」
「理紗は特殊なHLA(ヒト白血球抗原)を持っていて、適合する提供者は数百万人に一人しか居ないって」
私は天を仰いだ。それってもう不可能ってことじゃない。
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