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たとえ一時の気の迷いだって、浮気には変わりないわ。
わたしは裏切られた。傷つけられた。
この程度の男に、って余計に悔しかった。あんなに好きで好きで、相性もいい二人だって考えてたのに、一気に酔いが冷めたみたいな。
でも恋愛は、……人間関係は、汚れたマットを捨てるように簡単なものじゃない。
──それとも、その気になれば簡単に捨てて前を向けるものなのかな。わたしにはできなかっただけで。
「迫られて拒みきれなくて。もうあの子とは会わない。本当に悪かった!」
私の部屋で正座して床に額がつくくらいに頭を下げて謝る周人の姿に、同情心が湧いたのよ。
一回きりなら。誰にだって間違いはあるわ。こんなに謝ってるんだから許してあげよう、って。
……もうすぐ三十になる身で、今更何年も付き合った男を逃したくなかった、のも否定できない。
しばらくはぎくしゃくしたものの、周人はそれまで以上に優しくてわたしを気遣ってくれた。
だから最近は、浮気なんて完全に昔のことになって思い出すこともなかったのよ。
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