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〈ならよかった。ほんと俺も楽しかったよ。家もまた行くから、やっぱ出掛けよう。次はどこ行きたい?〉
うわ、いけない!
テーブルにグラスを置こうとして倒してしまい、わたしは慌てて布巾で拭く。お気に入りのランチョンマットが濡れちゃったけど、水だから洗えば済むわ。
アイスコーヒーと散々迷って、水にして正解だった。前のマットはコーヒーの茶色い染みが落ちなくて捨てたから。
手先まで不器用なのよね、わたし。自分でも嫌んなる。
端に置かれた周人のスマホが濡れてないか気になって顔を向けると、開きっぱなしのトーク画面の下のメッセージが目に留まった。
タイムスタンプからして、わたしの部屋に来る直前に送ったんだわ。本人は泊まる予定で、いまはお風呂に入ってる。
覗き見に対する罪悪感が頭を過る余裕もなく、ディスプレイにしっかり視点を合わせた。
トークルームの名は『Yuko』。すぐ上にある相手からのメッセージを読んだだけで吐き気が込み上げる。
〈周人、西口でいいのよね? 今どこ?〉
〈今日はすごく楽しかったわ。また家にも来てね。ごはん作るから。〉
なによ、これ? ……いったいなんなの?
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