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「やだっ! この傘がいいの。うさぎ、かわいいー」
女の子が母親におねだりしているのを聞いて、ももは驚き、嬉しくなった。
(そうなの! うさぎちゃん、かわいいでしょ!)
「そうねぇ……」
母親はももを開いたり閉じたりを繰り返した。
「どうした?」
「パパー、はる、この傘がいいの!」
「よし、じゃあ、その傘買ってあげよう。いいだろ? ママ」
「そうねぇ。中古の割にはきれいだし。なにより、傘が嫌いな花瑠が気に入ってるからね」
「やったぁぁ!」
(えっ? わたしを買ってくれるの? 本当に?)
「お会計、してきましょ」
母親と女の子は、ももを手にレジに向かう。
「花瑠、大事にするんだぞ」
「うん!」
父親に言われ、はると呼ばれた女の子は、ももをギュッと握りしめ、嬉しそうに頷いた。
(あなた、はるちゃんっていうのね。はるちゃん、よろしく。わたしはももよ。あなたを雨から守ってみせるわ)
「かわいいー」と女の子はももを抱きしめる。
(黒じい、黒じい、いいことあったよ。わたしのこと、すっごく気に入ってくれたの。いっぱい、いっぱい、あの子を守るわ。そして、いつか、にじも見れるかもしれないし、うみも見れるかもしれない。ぷろぽーずも聞けるかも!! 黒じい、わたし、がんばるね)
手を繋いだ親子がデパートを出ると、晴れた空が広がっていた。
女の子はご機嫌にスキップしながら、青い空を見上げる。
「早く、雨が降らないかなぁ……」
ピンクの傘を見て、女の子は嬉しそうにふふっと笑った。
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