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「!いい匂い」
男性はお腹すいた、と呟いた。暖多は微笑する。
「お口に合うといいんですけど…」
二人でテーブルを囲み、いただきます、と手を合わせた。体が冷えきっていたことを今更思い出した暖多は、味噌汁を飲んだ。
「おいしい!」
玉子焼きを一口食べた男性は、目を見開いて言った。
「本当ですか!よかった」
暖多が目に見えて安心したので、男性はしばし暖多をじっと見ていたが、やがてふっと笑って、今度は味噌汁を一口飲んだ。思わずほう、と息が漏れる。
暖多は、先日の残りのしらすと、お昼の弁当の残りのパウチ入りのツナと、お隣さんからおすそわけでもらった鮭フレークをご飯の上にのせた。豪華な「ねこまんま丼」である。
「それ、全部のせるの?」
男性は驚いている。それぞれをご飯のおともにすることはあっても、この三種盛りは珍しいだろう。
「はい!おいしいですよ」
男性も暖多の真似をしてみた。おいしい。先程までの暗い気持ちはどこかへ行ってしまった。暖多はそんな彼を見つめて、やっと思い出した。バイト先のファミレスの常連客だった。いつも暖多と同じ年頃の人三、四人と一緒に来ている。あまり彼のことを知らなかったが、いつも本当においしそうに食べているなという印象を抱いていた。ほとんど毎日来ていたが、ここ一週間は店に来ていなかった。
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