第一部

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 男性に風呂に入ってもらっている間、ヒーターと暖房を入れてバスタオルで水気を拭きながら着替える。同時につけると電気代がバカにならない、と母からは言われていたが、緊急事態なので仕方ない。肌着やバスタオルを洗濯かごに放り込み、上着は一旦部屋干しすると、さりげなく散らかっている作業部屋のドアを閉め、IHで片手鍋に水を入れて沸かし、ケトルの電源を入れつつ、布団に掃除機をかけてこれでもかと消臭剤を吹きかけた。寒さを忘れるほど慌ただしく、無香タイプの消臭スプレーの匂いでいっぱいになった。  何に慌てているのか自分でもよくわからないまま、暖多は急いで夕飯の準備をした。沸かした湯に顆粒だしとスライスオニオンと一口大に切った木綿豆腐とねぎを入れ、味噌を溶かす。体力は消耗しているだろうから少し濃いめにして、IHから一旦どけると簡単に生姜焼きをつくりながらキャベツなどを適当に盛りつけ、生姜焼きのあとはだし巻き玉子を焼く。味噌汁を器に入れたところで、電子レンジがご飯が炊けたことを知らせる。茶碗に盛り、ご飯のお供を並べる。一人暮らしが始まって以来の贅沢な食事となったが、たまにはそれも悪くないと暖多は思った。熱い焙じ茶を湯呑みに注いだところで、男性が風呂から上がって出てきた。
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