目が良いふりしてあの子わりとやるもんだねと

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目が良いふりしてあの子わりとやるもんだねと

 ぼくは視力が弱いです。正確な視力がどれくらいかは忘れましたが、数メートル先の人の顔がはっきり見えないくらいに弱いです。だからぼくは普段、コンタクトレンズを使っています。毎朝起きてコンタクトを付けて、寝る前にコンタクトを外して洗浄液で洗ってつけておく。2週間経ったら捨てて、新しいコンタクトに替える。  面倒くさいです。1分前後の作業時間が本当に面倒くさい。ぼくはドライアイなのでよく乾くし、寝起きでコンタクトを付けるときはよく瞬きしないと目が乾いていれると痛いし⋯⋯。  眼鏡も嫌いです。何かを装着しているのが鬱陶しいのです。ぼくの視力は高校に入学してから急激に悪くなりました。授業中は黒板の文字が見えないので流石に眼鏡を使いましたが、授業が終われば直ぐに外しました。学校の廊下で人とすれ違うときは、遠目だと目が合っているのかどうかも分からずに困りました。  更に困ったのが、部活でした。ぼくはバスケ部でしたが、人の顔がよく見えないので何となく周りの人の風貌を感じて誰が誰だかを判断していました。シュートを打つときも、感覚で打っていました。試合では、相手の背番号を確認するために急接近して相手に気味悪がられたりもしました。  何故そうまでして、コンタクトや眼鏡を付けなかったのか。単純にコンタクトや眼鏡が嫌いだったこともありますが、それにはぼくの超絶くだらないプライドが関係していました。  視力検査で上下左右どれかを答えるとき、ぼくは見えなくても勘で言い当て、検査結果では常に視力1前後をキープしていました。当時のぼくにはそれが誇らしいことであり、クラスメイトに自慢していました。そして、目が悪くても眼鏡やコンタクトに頼らず、問題なく生活できるのだとアピールしていました。  最近、片目の角膜を少し傷つけてしまい、片目だけレンズを付けて気持ち悪い視界になったり慣れない眼鏡をかけたりして不便な思いをしています。  若い頃は良くやっていたなぁと感心しつつ、やっぱりアホだったなぁと思います。
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