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何を言われているのか理解するのに暫く時間が掛かった。
アプリコットフィズをゆっくり飲み干し、彩女さんが出してくれたキュウリの小さなサンドイッチをつまむ。
モグモグと咀嚼している時に我に返る。
「え?え?えぇ~!!!」
今日1、いや、ここ数年で一番くらい大きな声が出た。
「きゃっ!ビックリした。」
彩女さんが目を丸くした顔で私を覗き込む。
「あ、ごめんなさい、あ、それより天夜さん!それってどういう意味で………?ん?天夜さん?あれ?天夜さんがいない。」
そこに座っていたはずの天夜さんの姿はなかった。
「なーんだ、夢だったのね。」
焦った。やだなぁ、私ってば。
しかし、呆れた声の彩女さんにツッコまれる。
「夢でも妄想でもないわよ。貴女がボーッとしてる間に仕事の電話が来て今、外にいるわよ。」
「うぇ?」
出したことのない変な声が出る。どうやら夢でなかったらしい。
「どうするのぉ?お返事するのぉ?なんてお返事するのぉ?」
ニヤニヤと彩女さんがからかう。
「いやいやいやいや、無理でしょ?だって相手は由緒正しい大財閥の後継者候補の一人よ?」
ブンブンブンと頭を横にふる。
「えー?貴女、プリンセスなのに?」
「だから、やめてって、それ。
天夜さんもそのうち正気にかえるよ。だって私だよ?父親もどこの誰だかわからない、母親にはあっさり捨てられるような人間だよ?」
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