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次の日、なぜかノリノリの美容室の皆さんに当日の衣装だけでなく、様々なドレスを着せられたり、脱がされたり、顔や髪をイジられたりした私。
オマケに皆さんのスマホで写真も撮られまくり。いやいや、それ、どうしようって言うのよ。
終わった頃にはぐったりしていた。
その翌日は祖父母をさそってメインダイニングでアフタヌーンティーを楽しもうと3人でムーンリットホテルを訪れた。受付で名前を告げると
「お待ちしておりました。総支配人より言い付かりまして、個室をご用意しております。」
と、レストランの支配人に言われた。
お気遣い頂いて嬉しいし申し訳ない。
祖父母は純粋に喜んでいた。
美味しいお茶とお菓子を楽しんでいたら、個室のドアがノックされた。
「失礼いたします。お楽しみいただけてますか?」
現れたのは今日もキラキラ眩しいくらいの冴月さんだった。
「お祖父ちゃん、お祖母ちゃん、こちらがホテルの総支配人の天夜冴月さん。天夜さん、私の祖父母、いえ、両親です。」
「初めまして。天夜冴月です。涼音さんにはいつも力になっていただいております。」
「ああ、こちらこそ、涼音がお世話になっています。今後ともよろしくお願いします。」
「コンニチハ、涼音、毎日楽しそう、デス。貴方、写真よりイケメン、ね。」
紹介と挨拶が終わったら部屋を出ていくと思っていたが、冴月さんは
「少しお時間をいただけますか?」
と硬い表情で私達に向き合った。
なんだろう?私は冴月さんにまだあのときの返事をしていないし冴月さんからも返事を催促されていない。
ブライダルフェアを成功させるまでは保留なのかな、と思っていたのだが。まさか、その話?
しかし冴月さんの話はそんな私の想像を遥かに超える衝撃の話だった。
「みなさんは、M国という国を知っていますか?」
私と祖父母は顔を見合わせた。旅行会社に勤めている私も、祖父母もわからない。名前くらいはどこかで聞いたことがある気がするが。少なくとも観光客が行くところではないと思う。
「M国はA大陸にある、小さな国です。エメラルドが産出される国で長い間独裁政治が送られてきました。まだ予想段階だが発見されていない資源は他にもある可能性が高い、と言われているそうです。」
ふと、数か月前のニュースで見たような覚えがあるなあ、と思った。50年も大統領が変わらなかったとか言っていた気がする。
「政権に反対するものは容赦なく殺されたり投獄されたり、軟禁状態に置かれたと言われています。反政府のリーダーも20年前に拘束されてずっと軟禁状態だったらしい。」
「そんなことって今の時代でもあるんですね。」
「そう。ところが数か月前にこの民主化を求める反政府組織が政権を奪取した。
軟禁状態にありながら国民を鼓舞していたリーダーが、先頃民主化政権の新政府の初代首相となったんだ。」
「そうなんですか。」
「新首相の名前はセドリック・デュボア。フランス系のM国人です。名前に聞き覚えはありますか?」
私達三人はまたしても顔を見合わせ首を横に振る。
冴月さんが何を言っているのかさっぱりわからない。
冴月さんは苦悩するような顔をする。しかし、それを振り払うように私達を見た。
「最初に申し上げますが、これはまだ極秘事項です。
来月、ブライダルフェアの数日前になりますが、デュボア氏が来日なさいます。日本に来て、首相や閣僚と今後の国交の話し合いをする予定です。
その際の宿泊先がこのムーンリットのプレジデンシャルスイートに決まりました。」
「……なんか、すごい話ですね。」
「すごいのはこれからです。取り敢えず、一口お茶を飲んでください。」
言われたとおり私達は紅茶を飲む。
「落ち着いて聞いてくださいね。
実はデュボア氏は未だ独身です。年齢は50歳。
結婚歴もありませんが、内縁の奥様がいらっしゃいます。
来日にはこの奥様も同行する予定です。
その方の名前が、サクラ・ヒムロ。
涼音さんの生みのお母様です。
そして、おそらく、デュボワ氏が涼音さんのお父様だと思われます。」
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