はじめまして

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はじめまして

 占い師としてではなく頭を整理したくて私は彩女さんのカフェに来ていた。  あのとんでもないアフタヌーンティーでの衝撃の日から一週間ほどがたっていた。  気づけばデュボワ氏が母を伴って来日する日もブライダルフェアも目の前に迫っている。  冴月さんに許可を取って、彩女さんにはすべて話をした。彩女さんは最後まで話を聞いてから一言、「サクラらしい」と笑った。 「あの子ね、好きな人を守るためならそりゃもう、手段を選ばないのよ。モデル時代私に手を出そうとしたスポンサーに飛び蹴り食らわせたのよ。正義感が強くてねー」 「いや、彩女さん、それ無謀とか無鉄砲とか考えなしとかじゃない?」 母の武勇伝に苦笑した。 「悪かったわね、考えなしで。」  突然聞こえてきた声に振り向くと、そこには20年後の私はこうなんだろうな、という容姿の女性と強面のガッチリした外国人男性が立っていた。 「サクラ!」  彩女さんはカウンターを抜けて母に歩み寄った。 「……久しぶり。彩女。」 「なによ、もう、連絡くらいしなさいよ。」 「ゴメンね。色々あってね。」  彩女さんは、取り敢えず店のドアに「貸切」の札を掛けてくれた。 「なんで……来日は数日先のはず…ですよね」  つぶやくような私の声に母はあっけらかんと答える。 「そりゃ、貴女に一日でも早く会いたいから。私もパパも。議会説得して来たのよ。」 「パパって…。」  母の隣りにいた身長2メートル近い強面の男はオールバックにした銀髪に鋭い瞳で私をジロリと睨んだ。 「……はじめまして。氷室涼音です。」 「…………すずね…、涼音、涼音!涼音!すーずーねー!!!!!」  突然大男が私の方に突進してきたと思うと、ガバッと抱きついてギュウギュウ抱きしめた。 「ぐぇ!!ちょ、ちょっと!やめてください!デュボワさん!」 「涼音!すずねー!!」  壊れたレコードのように私の名前を呼び、抱きしめ、キスの雨を私の頭や頬に降らせる。目からは大量の涙を流している。  何なんだ、この人。強面のクールなおじさんかと思ったらぶっ飛んだ泣き虫親父。  だいたいさ、この人、いくら小国とはいえ未だ政情不安であろう国の首相、って言ってなかった?なんでSPも付けずに勝手に日本に来て勝手に行動してんの?  抵抗するのも諦め、されるがままになっている私だった。ってか、母!助けなさいよ!何を微笑ましいもの見てるような顔してるのよ!  どのくらいたったろうか、「貸切」を出した店のドアから冴月さんが慌てたように入ってきた。 「涼音!」 「冴月さん!?」  デュボワさんのギュウギュウ攻撃の隙間から助けを求めるように冴月さんを見た。 「………誰だ、お前は…」  泣きながら私にマーキングするが如くキスを続けていたデュボワさんは、冴月さんを視界に捉えると、急に殺し屋みたいな顔で、いや実際に殺し屋なんて見たことないけど、ともかく恐ろしい顔で冴月さんを睨んだ。 「私が呼んだのよ〜。間もなくサクラのご両親も来るわよ。」  彩女さんがヒラヒラ手を振る。 「チョット!彩女!誰?このハンサム!」 「言い方、古いわね。この人はあんたの娘の彼氏よ、彼氏!」  彩女さんは勝手なことを言っている。この発言に、デュボワさんがキレた。 「なんだと!?殺すか?」 やーめーろー!!!!!
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