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「まー、そのあとも寝る間も惜しんで組閣したり、前政権の犯罪者たちの裁判を行ったり大忙し。そのやる気の源はなんことはない日本に行って娘に会いたいってだけなのよ。」
喋りながらもミートパイを食べる母。食べ終わると睨み合いの二人に声をかけた。
「ねぇ、いつまでも涼音の彼氏睨んでないでよ。ミートパイ食べないならセディの分頂戴。」
「……食べる。涼音、アーンしてあげるからパパの側に来なさい。」
いや、怖いって!
ぶんぶんと首を振る。
「涼音、その男は何なんだ。本当に彼氏なのか?」
「え?いや、その。」
シドロモドロの私。
「結婚を前提にお付き合いを申し込んでいます。」
冴月さんがしれっと答える。
「け、結婚!駄目だ!許さん!まだ早い!」
「早くもないでしょ。私が涼音を産んだの今の涼音よりずーっと若いわよ。」
「駄目だ!26年間親子として暮らさなかったんだから、これから少なくとも26年は一緒に暮らす!」
「………50過ぎるけど。私の結婚。」
ぼそっというと
「大丈夫だ!日本人は長寿だと聞くし。」
話にならない……。
「ワタシは結婚、賛成。グレードグランドチャイルド、ハヤク、見たいです。」
ひ孫が見たいというお祖母ちゃん。
デュボワさんはピシッと固まった。
「キャー!私がお祖母ちゃんになるの?」
母がはしゃぐと
「サクラ、涼音は私とソフィアの養女になってる。戸籍上はお前の妹だ。
涼音に子供が生まれてもお祖父ちゃんお祖母ちゃんの称号は私達だ。
お前は『おばちゃん』だ。ましてやおばちゃんの籍も入ってないパートナーはただの知り合いの男だ。涼音の結婚に何も発言権はない。」
お祖父ちゃんきっついブラックジョークを真顔で言う。その言葉に2mの大男が崩れ落ちる。
お祖父ちゃん、最強かもしれない。デュボワさん、日本式の土下座をする。
「せ、正式に婚姻をします!サクラと夫婦になります!できれば涼音のことも娘として手続きします。」
え、今更面倒くさい。
「そう遠くない未来に私の籍に入りますから、いらないんじゃないですか?余計な手続き。」
だーかーら!冴月さんもデュボワさんを煽らないで!
あれ?ところで私、いつ冴月さんと入籍することになった?
疑問符だらけの私に冴月さんが囁く。
「ちゃんと愛されてたでしょ?両親に。だったら俺の隣にいることに躊躇いはなくなったよね?」
親にすら捨てられるような娘、と思っていたから私を好きだという冴月さんの言葉を受け入れられなかった。でも私は間違いなく愛されていた。
冴月さんはいつもの悪い笑顔。
「愛されてないどころか重すぎるよねー。でも、俺の気持もかなり重いから。覚悟しといてね。」
夜更けのカフェで私への愛を皆が語る、なんともカオスな夜だった。
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