ブライダルフェア・パニック

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「山田さんって天夜GMと同級生なんですか?」  用意が整い、美容室から式場の控室に案内される途中で、付き添っていた山田さんに聞いた。 「ああ、そうなの。小学校時代の。福ちゃんと3人。あの二人は中学から中高一貫校に行ったんだけどね。」 「あ、じゃあ、私とも同い年なんですね。」 「ほんと?」 「はい。」 「私、天夜君、いやGMと誕生日が近くてね、うちの学校、誕生日で出席番号付けてたから、席、後ろ前だったの。それ以来の付き合い。」 「え?私、天夜さんと誕生日一緒なんですよ。」 「うそ!私、二日前。9月3日、ドラ○もんと一緒」 ………いつか冴月さんが、私と同級生だったら良かった、って言ったことがある。  そうだとしたらトーゴさんや山田さんとも同級生だったりして。そうだったら楽しかったろうな、と思った。  いや、これからだ。私はきっと山田さんとももっともっと仲良くなれる。「友達」ってやつだ。心がくすぐったくなる。 「はーい、こちらの部屋になりまーす。」  山田さんに案内されて控室のドアをあけた。    その控室には冴月さんが先に入っていた。 「ごめんね。ホントの式は新郎新婦、別の部屋なんだけど、模擬だからね、ここで二人で待機しといて。」  山田さんの言葉も耳に入らないくらい、私は冴月さんのタキシード姿に釘付けだった。 「ふぁ、カッコいい。」  思わず心の声が出る。なんだろう、明らかに私の数倍色気がある。これはスゴイ。一目みたら腰が砕けそうだ。 「……涼音……。綺麗だ。すごく。」  冴月さんも私を見つめる。 「はいはい、時間がないから段取り始めるわよ〜」  山田さんがパンパンと手を叩く。その音にハッとした。  仕事仕事、と呪文を唱える。  ブライダルの担当者が式での順番を説明していく。  あらかた説明が済んだ頃、部屋がノックされた。 「失礼しまーす!わあ、氷室さん、キレイ!あ、GM、代打の代打、お疲れ様です!」  桧山さんだった。私はすぐに駆け寄った。 「桧山さん、旅行ブースの方は?大丈夫ですか?」 「うん。模擬結婚式をみたいお客様が多いからあっちのブースは落ち着いてきた。」  ホッとする。フェア自体は明日もあるけど、明日には本当のモデルさんも来るだろうから私はムーンリット・ドアに専念できる。 「あ、GM、お客様お連れしましたよ。」 「お客様?」  怪訝な顔をする冴月さん。 「冴月、来たわよ〜」 「いやー、めでたい!おめでとう、ふたりとも」 「え?なんで?」  そこには相変わらず美しい冴月さんのお母様と、杖は付きつつも車椅子を使わず自力で立っているお祖父様がいた。 「私がお知らせしました!会長に。LI○Eで」  ニコニコと桧山さんが言う。 「は?桧山さん、うちの祖父とLI○Eで繋がってるの?てかお祖父ちゃん、今入院中だよね?」 「わはは。あんなもん、たいしたことない。  薬飲んで寝てるだけだからな、退屈だ。そしたら桧山さんからお前が結婚式するって聞いてな。こりゃ見に行こうってお前のお母さんを誘ったんだ。」 「……嘘だろ。いや、模擬結婚式だって!モデルが、これなくなったから…」 「いっそのこと本当にしちゃえばいいんじゃない?」 「母さん、そんなわけに行かないだろう。相手の親御さんにも許可取ってないし。」  いや、冴月さん、私の親よりも私に許可取ってませんけどね。いつの間に私プロポーズOKしたことになってます? さらに、 「そういえば、涼音ちゃん、私、ソフィアさんにも連絡しといたからもうすぐ到着なさるわよ。」  それはそれは美しい微笑みで冴月さんのお母様は追加の爆弾を落とした。
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