美魔女と魔女の出会い

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「しかし、嘘の色って嫌な色なのね。真っ赤な嘘って言うのはなんなのかしら?」  彩女さんが首を傾げる。    私には人の持っている感情や性質が色で視える。そして、その人に影響を与えている人の色も。こうなるともう、オーラとか共感覚とは全然違うもので。むしろ霊感に近いものだと彩女さんは言う。  たぶん生まれたときから父も知らず、母にも物心つく前に捨てられた。  祖父母は大事にしてくれたけど、やはりどこか遠慮がお互いにあったと思う。  おまけに半分日本人の血を継いでいる祖父はともかく、祖母や私はどう見ても外国人の容貌をしていたから、なかなか周りとも馴染めなかった。     自然と周りの人の気持ちや顔色を伺うような子供になっていった私。  この人不快に思ってる、とか悲しんでるという感情が色で見えたことで自然とトラブルを回避できた。  初めは周りの人もみんなこんなふうに色が視えるんだと思っていた。でもある時、笑顔を見せながらも悲しみの色を纏った祖母に 「おばあちゃん、悲しいの?悲しい色が視えるよ。どうしたの?誰かに虐められたの?」  祖母は驚いたが、なんでも祖母の家系に偶に「魔女」とか「霊感のある人」が出ることがあるらしくすぐに納得してくれた。  祖母は、大人になって判断できるまで色が視えることは家族以外には話さないようにとキツく諭した。  大人になっても「いい色」を持っていたとしてもその人がこの先も信頼できるか自信がなかったから、私が視えることを告げたのは彩女さんがいまのところ唯一の人だ。  彩女さんは最初から「あれよね。絶対音感があるとか、匂いに敏感とかみたいなものよ。上手く付き合っていけばいいのよ」と事もなげに言ってくれた。  そればかりではなく 「絶対音感がある人は音楽家になればいいし、嗅覚の優れている人は調香師になれるだろうし。あなたもその力を活かしてみれば?」とムチャブリをしてきて。  このカフェで占い師をしなさい、と半ば強引に薦めてきた。  最初は、なんの知識もないのに!と断ったが気づけば彩女さんの手のひらの上で転がされて、「オーラ占い」などと冗談みたいなことをやらされていた。  厭々始めたことだが、占いというよりその人の感情の色を視て 「ああ、本来こんな性質の人なのに、何か(誰か)の影響で悩んでいるんだなぁ」とかが視えてくる。それを告げると、相手は勝手に悩み事や鬱屈したものを吐き出してくるからそれを聞いている。 「ありがとう!スッキリした!」と言ってくる人が多いから、占いというよりは「悩み事相談」なんだと思うようにしている。  きっと精神科とかカウンセラーとかに相談するには敷居が高いけど、たまたま入ったカフェの占いならちょっと試してもいいかなー、くらいの気持ちなんだろうと思う。  特に宣伝もしていないのに、口コミやリピーターで「オーラ占い」は流行っていた。  「○日は占いお休みします。次回は☓日」なんて張り紙をするほどには。
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