美魔女のカフェ

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美魔女のカフェ

 店のカウンターの中にいたオーナー兼ママである彩女(あやめ)さんは開いたドアから入ってきた私の顔を見て「あら?」と少し驚いた顔をした。  時刻は6時30分。夜のカフェにはまだお客の姿は見えない。  カフェと言い張っている彩女さんだが、そもそもオープン時間が夜のみで、お酒がメインの品揃え。誰がどう見てもバーじゃないかと思うんだが、彩女さんはこの店を「占いのできるカフェ」と言って譲らない。 それは占い師がいなかった頃、普通のカフェだった頃の名残なんだろうか。 「あなた、今日休みじゃなかった?涼音。デートだったんじゃない?」 「うーん?なんか取引先の接待とかなんとか言ってた。」 「あら?ドタキャン?」  彩女さんは私のカップにシナモンティーを淹れてくれた。狭くも広くもないバーのような自称カフェで彩女さんは私が何も言わないと勝手にこれを出してくる。    シナモンが霊感を高めるのにいいとかなんとか言ってる。  真偽の程はしらない。  ついでにシナモンのクッキーやらシナモンブレッドやらを出してくるので私はここ以外でシナモンと名の付くものは手にしたことはない。 「そうねぇ。ドタキャンってことになるかなぁ。」 「涼音はそんなときも怒らないの?」 「怒るっていうか…。」  一応、私が付き合っている人、私より2年先輩の27歳の南野賢也さん。  同じ会社の別部署にいる。  私達の会社はいわゆる大きなグループ企業の系列会社だ。  親会社は運輸業を主としている。  うちはその中で旅行業務を担当している。  
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