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わかっているのに、刹那の希望で顔を上げる。
そこには、変わらず眠り続ける加奈子がいた。
風が窓を揺らして、ガタガタとうるさいだけ。
何度でも味わった絶望に、それでもまだ涙が出た。
加奈子が事故にあってからしばらく、祥真は食べることも寝ることもできなかった。
ただ虚空を眺めて後悔しては、自分を殺したくなった。
そんなある日、目の前に加奈子が現れた。
呆れた顔をして、祥真にご飯を食べなさいとか、ちゃんと寝てとか言うものだから、夢心地のまま従った。
病院に行けば、当たり前のように加奈子が眠っていたので、あれは幻なのだとすぐにわかった。
けれど、祥真は「人を見えなくする」などという不思議な現象を起こすことができるのだ。
眠っている加奈子の意識を救い上げて見ている可能性だってあるんじゃないか?
そんな、普段の祥真ならバカバカしいと一蹴するような考えに縋って、祥真は加奈子の幻想と生活をし始めた。
加奈子と同じ職場は、加奈子の不在を思い知らされるだけだったから、すぐに辞めた。
新しい職場に真子がいると気付いて接触したのは、加奈子との幸せな思い出を想起させてくれるからだ。
どこから情報を仕入れているのか、祥真が真子と同じ会社に転職したと聞きつけた由佳里からの相談もあり、真子の事情に深く突っ込んだ。
けれど、たぶん失敗だった。
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