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プロローグ
――ただいま
ふんわりと外の空気が入ってきて、振り向く。
そこには誰にもいないように思われた。
時計を見上げれば、もう21時。そろそろ夫が帰ってくる時間だ。
夕飯も作り終えて、手持ち無沙汰でソファに沈み込む。
スマホを見ると佐竹さんから『どうですか?』とだけメッセージが来ていた。
昨日、私は佐竹さんの前で散々泣いてしまって、そしたら佐竹さんがおまじないをかけてくれた。彼が言っているのはたぶん、そのときのことだろう。
心配してくれてるのかなんなのか。どう答えたものかと迷っていたら、和樹からのメッセージを受信した。
『なんで俺のこと無視して男と連絡してんの?』
驚いて立ち上がり、周りを見渡してみる。誰もいない。
けれど、さっきまで閉まっていたはずの寝室のドアが開いていた。いつの間にか電気もついている。
そっと覗いてみると、和樹のカバンが置いてある。
そんな、まさか。
震えながら、和樹からのメッセージを読み返す。
どうやら、私は夫のことが見えなくなった、らしい。
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