フィルムに恋、染まる

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 万智は学校の終わり、高校の近くにある写真屋に来ていた。 「どうでした? ちゃんと写ってました?」 「写ってましたよ。でも、何というか、個性的な仕上がりに……ご確認下さい」  この店のカメラマンでもある各務には、高校に入ってから始めたカメラの事で相談に乗ってもらっていた。 「ネガフィルムとプリントした写真です。私はレッドスケールフィルムは使った事なくて、夕焼けに染まってるみたいで面白いですね」 「各務さん……正直に言ってくれて良いですよ」 「ま、禍々しい?」  写真の出来栄えにがっくりと肩を落とした。レッドスケールフィルムは被写体を赤やオレンジ、黄色の色調に写すという特徴がある。 「神社とかお寺を撮ったのがまずかったかな? すごい不吉な写真みたい」 「学校も、なかなかの不穏さですよ」  各務が自身も通ったという高校の写真を指さした。 「絶対何かが起きますね……」  遠くでカラスの鳴き声が聞こえた。 「不吉……」  学校周辺の商店街や寺社仏閣、河原など身近な場所を撮ったのだが、どれもフィルムの特性と合っているとは思えなかった。
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