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「そう? ありがとう」
友貴はすっかり冷えた手で、万智の手を握った。
「行こっ。行きたい所あるの」
「えっ」
友貴は万智の手を握ったまま、白い息をはいてずんずんと進む。その横顔は今にも泣きそうな子供の様にも見えた。
「文化祭を思い出すね」
友貴の堅く結んだ唇がほんの少し緩む。
「……うん」
友貴と万智は女の子同士で手を繋いでいた子供の頃をそのまま延長した様な関係だった。
友貴は繋いだ手をゆっくりと離した。
「楽しかったよね。万智のウェイター姿格好良かったな。すごく女子に人気あったよね」
「……女子しかいないんだから仕方ないでしょ」
クラスの出し物が男装カフェだった。
「でも、それで何組かカップル出来たじゃない」
「まあ……告白するきっかけにはなったのかもね」
友貴が何かを言いかけて口ごもる。
「あの人達も高校を卒業したら別れて、普通に男の子と付き合うのかな」
「友貴、どうしたの。さっきから」
「……そこ、右」
「ねえ、どこに向かってるの?」
「万智も良く知ってる所」
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