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銀杏の木の後ろから、牛模様の猫がうるさそうに顔を出した。友貴が近寄って優しく撫でると、目を細めてじっとしていた。
「あ……綺麗」
夕日が銀杏を黄金色に光らせ、落ち葉の絨毯にしゃがみ込む友貴と猫がまるで絵に描いた様に美しい。カメラを取り出してパシャリと写真を撮る。もしかして、ものすごく綺麗に撮れたかもしれないと、胸がドキドキした。
「この子、なで牛みたい。ご利益あるかな」
「あるかもね。私も触っておこう」
牛猫はしばらく大人しく撫でられたあと、むくりと起き上がりのしのしと社務所に向かって歩いて行った。
「そろそろ行ってみる?」
「うん」
いつの間にか、自分達の長い影を追い越す程のスピードで二人は走っていた。息を切らし、ほぼ同時に駆け登った土手から、オレンジに染まる川が見えた。
「好きだよ、友貴。これからどうなるかなんか分かんない。でも、それだけは絶対に変わらないと思う」
「……万智。うん。私もね、ずっと考えてた。友貴と恋人になりたいのかなとか、自分の気持ちがはっきりしないなら離れた方が良いのかなとか、色々考えちゃって……不機嫌になったりしてごめん」
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