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「この写真は使えないな」
銀杏の木の下で、猫と一緒に写っている友貴の写真を懐かしい気持ちで眺めた。その写真は赤と黄とオレンジに彩られていた。
「赤すぎでしょ……」
探り合いばかりだった二人の本当の気持ちが写し出されている様だった。
「使える写真を探さないと……」
パソコンに移していた携帯電話の写真を一つ一つ見る。高校の文化祭の写真が出てきた。
「みんな、可愛いな」
男装カフェのウェイター姿の中に、友貴を見つける。こっそり手を繋いで、花火を見た事も最近の出来事の様に思い出せた。
「ずっと忘れてたくせに」
当たり障りのない写真を友貴に送ってパソコンを閉じた。
「二次会で使ったらウケるかな?」
一本だけ残ってた消費期限の切れたレッドスケールフィルムをカメラバッグに入れた。当日は、出来るだけ感傷的にならない為にカメラマンに徹する事にした。
パソコンに送った写真を見たのか、友貴からすぐ電話がかかって来た。一呼吸おいて、電話に出る。
「……もしもし。写真届いた? え? 赤い写真も? いや、あれは……」
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