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離した手をまた繋ぎ直してしまいたくなるからと言ったら友貴はどんな顔をするのだろう。
「ごめん。引っ越しする時にどこかにしまったんだろうけど……」
友貴は残念がったけど、それはもう高校時代の楽しかった思い出の一つに過ぎないという事なのだろう。
「いい加減に捨てないと」
赤い写真をシュレッダーにかける。手動でハンドルを回すと、バリバリと音を立てて写真が細かくなった。息を切らし、土手を駆け上がった時の綺麗な横顔も、水鳥を指差す笑顔も、他の誰かに見せるくらいなら消えて無くなってしまえ。そんなやけくそに似た気持ちでハンドルを回した。それなのに積もり積もった細切れの写真は赤く燃える様に美しかった。
後日、ネガフィルムをデータ化してもらいに写真屋に行くと、母親になったという各務が赤ちゃんを抱いて店に出て来た。
「懐かしいわね。そう、友貴さん結婚するの」
「はい」
「ところで、本当にこの写真で良いの?」
「……はい」
「夕日に浴びた彼女が綺麗で思わず彼氏が撮ったって感じに見えるけど……」
そう言いながら、各務は吹き出した。
「それくらい、してやっても良いか」
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