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プロローグ
エアコンの冷たい風が、教室をぐるぐると巡っている。
頬杖をつく花村尊の長い前髪が、気だるげに浮き上がる。
こんな空間、ただでさえ息が詰まるのだから、早いところ秋が来て窓を開けられたらいいのに。
まだまだ夏の気配が色濃い九月は、一年の中でも特に煩わしい。
高校二年、C組。このクラスの一員になって半年が経つが、未だに自分の属する場所だという感覚が尊にはなかった。
同級生たちと一定の距離があるのは、昨日や今日始まったことではない。
頑なに関わりを拒んでいるわけではないが、積極的にそうする必要性も感じないのだ。
遅刻は常習犯、授業はしょっちゅうサボる。
そんな尊にクラスメイトたちだって、わざわざ近寄ってはこない。
よく話すのは、中学の頃からつるんでいるケンスケとナベだけ。
それで何も問題はなかったのに。
ここ最近は憂鬱な授業に出席してまで、クラスメイトたちの観察を余儀なくされている。
イレギュラーは全て、ほぼ強制的に参加させられたゲームのせいだ。
教師の目を盗んでスマートフォンを操作し、すぐさま教室内を見渡す。
視線の先は、特定の生徒数名。
だが今日も、何の手がかりも得られない。
消えそうなほど小さくなった飴玉を転がして、尊は小さく舌を打った。
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