イレギュラー

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 まさかとは思ったが、その翌日にもメモはあった。  ケンスケとナベに『俺の机に誰か近寄ってなかった?』と尋ねてみたが、目立った動きを見た覚えはないらしかった。  ということは、同じクラスの者の仕業か。  深いため息と共に渋々持ち帰ったそのメモを、寝転がったベッドの上で睨みつけた。  新たに添えられたのは、“どうしても連絡が欲しいです。嫌になったらブロックしてもいいので”のひと言。  酷く面倒くさい。  けれど送らなければ、いつまでもこのメモから逃れられない予感があった。  尊は仕方なく、そこに記されたIDをメッセージアプリに入力した。  メモにある通りの“chi.”という名のユーザーが表示される。  アイコンは、例のメモ用紙を撮影したと思われるテディベア。  女子だろうという印象を持つが、これだけで判断するのは早計か。  そうは思えど、気安く声をかけてくる者こそいなくとも、黄色い歓声を遠巻きにあげられていることを尊はよく分かっている。  整った顔立ちに180㎝の高身長。  ウェーブがかった黒髪はセンターで分け、無造作だが落ち着いた印象を与える。  それでいて、さすがに学校では控えめに飾っているが、いくつも開いたピアスの穴。  いつも気だるげで不良めいた尊の雰囲気は、同年代の男子たちの中でもとびぬけた色気を醸し出している。  ケンスケ曰く、『なんでもめんどくさがる尊がモテるとか女子って意味分かんね』。  恋愛ごとに興味のない尊にとっては、どうでもいいことだけれど。
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