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「俺は悪くない、俺は正義だ」
ふらふらとベランダに出る。太陽が目を射た。
審判の光のように思えた。
もう彼女も、内定も、居場所もない。
薄々、気づいていた。
本物の正義なら、きっとこんなに責められることはない。
「吉崎ー?」
刈谷が戻ってきた。
母親想いで、俺を心配してわざわざ駆けつけてくれた、優しい友達。
床の封筒が、落ちたパソコンが、俺たちを隔てる川のようで。
その光景を見て、俺は思い知らされた。
いつの間にか、悪に染まっていた。
もう、元に戻れない。
正しくありたかったのに。
いや、まだ間に合うか?
俺は手すりを乗り越えた。
「おい!」
「大丈夫、制裁するから」
俺は笑って飛び降りた。
みるみる地面が迫ってくる。
激突する寸前、正しいことをしたと確信した。
これで悪を排除できる。
俺もそっち側に行ける。
そうだろ?
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