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一週間後
「バイトどう?」
「順調。パートさんもいい人ばかりだし」
「吉崎、優しいしな」
「普通だよ」
刈谷に返信しつつ、僕は「まあ正直助かってるだろうな」と思った。
レジの操作もすぐ覚えたし、シフトも入れまくり、担当外の仕事も積極的に手伝っている。昔からいわゆる「いい子」の自覚はあった。
「それより、お母さんの具合はどう?」
返事が来るのに少しかかった。
「今度手術することになった」
「そうか。大変だと思うけど、刈谷まで体調崩さないようにな」
「サンキュ」
ふう、と僕は息をつく。
刈谷は休学した。母親に末期がんが見つかったそうだ。「うち母子家庭だから。落ち着くまで休むよ」と聞いたのはあの夏の日のこと。
わざわざ後釜を見つけてからバイトを辞めるなんて真面目だなと思う。
バイトを始めて、僕はすぐこの仕事が気に入った。
例えば僕が「年齢確認」ボタンを押さないと客は酒を買えないし、僕が操作を教えないといけない客もいた。
会計済んだけどレジ袋が足りない。
お金が足りなくて取り消したいんですけど。
クレジット払いはどうやるの?
老若男女関係なく毎日頼られると、偉くなった気がした。
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