万引き

3/3
前へ
/18ページ
次へ
 すべてがスローモーションのように見えた。  舌打ちした男が、カートを突き飛ばす。  カートが当たり、おじいさんが特売コーナーに倒れ込む。  衝撃でスナック菓子の袋が飛ぶ。  男は自動ドアへ走る。  いましも幼稚園の女の子とお母さんが入ってきたところで。 「邪魔だ!」  怒鳴り声に親子が固まる。突進する男。誰かの悲鳴が聞こえる。 「うわぁあ!」    とっさに、僕は男の足首にとびかかった。  一緒に倒れ込みながら確信する。  こいつは、紛れもなく「悪」だ。  そして僕は誰がどう見ても「正義」だろう。  きっと、揺るぎない地位が手に入る。  
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加