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すべてがスローモーションのように見えた。
舌打ちした男が、カートを突き飛ばす。
カートが当たり、おじいさんが特売コーナーに倒れ込む。
衝撃でスナック菓子の袋が飛ぶ。
男は自動ドアへ走る。
いましも幼稚園の女の子とお母さんが入ってきたところで。
「邪魔だ!」
怒鳴り声に親子が固まる。突進する男。誰かの悲鳴が聞こえる。
「うわぁあ!」
とっさに、僕は男の足首にとびかかった。
一緒に倒れ込みながら確信する。
こいつは、紛れもなく「悪」だ。
そして僕は誰がどう見ても「正義」だろう。
きっと、揺るぎない地位が手に入る。
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