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現場にて
「お名前は刈谷正義さん、吉崎さんとは大学が一緒、と……今日は遊びに来てたのかな?」
「連絡がとれなくて、様子を見に来たんです」
マンション6階の外廊下で、小太りの学生は俯いている。その背後、立ち入り禁止のテープの向こうには、遠巻きに見守る住民の姿があった。
警察官は刈谷に視線を戻す。
「真っ青だね、大丈夫?
まあ、無理もないか。目の前で友達が飛び降りちゃあね」
シートで覆われているが、ベランダからみおろせば、まだ吉崎の遺体がある。
頭が柘榴のように割れ道路を赤く染めて、凄惨な現場だった。
「……それもあるんですけど」
警察官はメモをとる手を止める。
刈谷は妙な顔をしていた。
「会わない間に、まるで別人みたいになっちゃって……」
「なにか、きっかけとかはあったのかな」
「わからないです。でも……」
「でも?」
「ひょっとしたら、僕がバイトを紹介したせいかもしれません」
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