僕がみていた君と私がみた貴方

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—僕——  教室で見るあの子は、妖しげな美しさを持っていた。  整った顔立ちに、サラサラと流れるような黒髪、そして背の高い体から伸びる細く白い足。凛とした姿勢とは裏腹に、どこか気だるげな瞳がすごく印象的な子だった。きっとクラスの誰もが彼女に近寄りがたく感じていて、しかし、クラスの誰もが彼女に近づきたかったと思う。  そして例にもれず、僕。  今日の放課後、17:00。その時間、人が来ることはないだろう北校舎の空き教室に彼女を呼び出すための手紙を書いた。「伝えたいことがある」と書いた手紙を入れた横長の白封筒を、可愛すぎない四つ葉のクローバーのシールで留め、朝早く彼女の机の中に差し込んだ。  その後、彼女が登校して、僕の手紙を確認してからは、気が気でなかった。拒絶されるかもしれないという不安、もう後戻りできないという緊張、そしてほんの少しの淡い期待。  複雑な心情を抱えながら、1日が過ぎ、帰りのHRが終了した。  担任の教師への挨拶と同時に、北校舎の空き教室に向かう。階段を一段ずつ駆け上って、長く伸びた廊下を力強く踏みしめる。元気よく鳴く蝉の声に励まされながら、突き当りまで歩き、左の教室の戸を開けて中に入る。  入った瞬間、むわっとした夏の空気が僕を襲って来た。たまらず、エアコンのスイッチを入れる。ブオーッと動き出して、冷風が送られ、暑さが少しだけ和らぐ。  空き教室が涼しくなるまでの間、トイレの鏡の前に立って、入念に髪の毛を整えることにした。きっと彼女は、人を見た目で判断するような人ではないだろうが、それでもせずにはいられない。  踏ん切りがついてから、教室に戻る。時計を確認すると、16:50。彼女はまだ来てはいなかった。  心の中で、何度も伝えたい言葉を復唱する。  55分、復唱する。58分、復唱する。59分、復唱する——。  ガララ。    教室の戸が開き、彼女が入ってきた。そして僕の方を見て、尋ねる。 「あなたが手紙をくれたの?」  彼女にそう言われて、自分の名を手紙に書かなかったことを思い出した。 「え……、うん、そう。来てくれてありがとう。あれ、名前書いてなかったっけ?」  わざととぼける。自分と、そして彼女の緊張をほぐすために。 「ええ、誰だか分らなかったわ……、それで、話って?」  しかし、彼女の準備はできていたようだった。それなのに、臆病な僕はその弱気な態度を彼女に見せてしまう。 「あ、そうなんだ……、いきなりそんなに話したことない男子から手紙とかもらっても困るよね、ごめんね」 「いえ…、そんな」  結果的に彼女を困らせてしまった。もう、腹をくくるしかない。伝えるのだ。俯きがちな彼女に向かって、僕は精一杯の勇気を振り絞る。そして——。
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