僕がみていた君と私がみた貴方

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—染まった私—— 「えー、非常に伝えにくいことだが、皆に言っておかなければならないことがある。……、3日前、山田が、下校途中に事故に遭い、意識不明の重体に陥っていたが、昨日、そのまま息を引き取ったそうだ。」  担任教師の言葉にクラスがざわつく。 「は、え?」 「うそ、信じられない……」 「え、先生、え、まじ…ですか?」  クラスがうろたえる中、担任教師は再度口を開く。 「皆が信じたくない気持ちはわかる。今すぐに気持ちを切り替えることなんてできやしないだろう。だから…、少しずつでいいから…、山田のためにも前を向いていこう」  担任教師の言葉に、クラスメイトの大半が涙を流す。担任教師も、声を震わせながら、話を続ける。 「これから、全校集会で山田に向けての黙祷が行われる。だが、気持ちの整理がつかないものもいるだろう。だから、このクラスだけは、ここで黙祷を捧げることを許してもらった。9:00ちょうどに黙祷を開始するから、それまで、気持ちを落ち着けながら、待機しておいてくれ」  担任教師の話が終わると、涙ぐんでいたクラスメイトの数人が「トイレに行ってきていいですか」と席を離れた。気持ちの整理をつけるため、私もその流れに乗って女子トイレに避難する。  しばらくしてから、女子トイレを出て教室に戻る途中、事情を知らない他クラスたちの雑談が聞こえてくる。 「ねえ、今日の緊急の全校集会って、1組の山田君のことらしいよ」 「え、なんで山田君?」 「なんか、山田君亡くなったらしくて——」 「え、なんで!?」 「私も詳しくは知らないんだけど、トラックとの衝突事故だったらしいよ。その事故の目撃者っぽい人が言ってて、原因はトラックの居眠り運転だったらしいけど、山田君もそれに気づかずに道路に飛び出すくらい舞い上がっていように見えたんだってさ」 「え、なんかその直前に良いことでもあったのかな?」 「そうかもね……あ、前、進んだよ。いこいこ」  全てのクラスが、体育館に向かったためか、ひどくひっそりとした冷たい廊下を1人で歩き、自分のクラスへたどり着く。  教室へ入ると、何人かの席が空いていた。きっと、トイレに駆け込んでいった子たちだろう。担任教師は、戻ってこないと踏んだのか、その場にいる者たちだけで黙祷を開始する旨を告げた。 「それでは、黙祷——」  担任教師の言葉で私は目を閉じる。そして、事故に遭う直前の山田君を思い起こす。  勇気を振り絞った告白を成功させた彼は、ひどく喜んでいた。その後に起こることなんて知る由もないから。でも、私はその後に起こることを知っていながら、告白を引き受け、何も言わずにその場を立ち去った。私は彼を見殺しにしたのだ。  私は罪悪感で黒く染まった心の中で、彼に懺悔した。 「本当にごめんなさい、未来を読める者が未来を変えることは許されないの」            了
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