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 白砂が続く浜辺は、人影もなく閑散としていた。寄せては返す波音が、静かな子守歌のようだ。穏やかな海上にはシュタルトから出港した大型船が見えた。  東の大陸では帆船が主力だが、機械が発達した西の大陸では蒸気船が活躍している。 「雨の海は、あまり貿易は盛んでないと聞いたけれど、シュタルトの港は発達しているんだね」  感心したように、灯真が言う。砂浜には彼と海里華の他は誰もいない。この入り江は地元の名所ではあるが、水龍が暴れるようになっては近づきたがる者もいないだろう。  注意深く海の向こうを探ったが、幸い危険は見当たらなかった。
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