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朝食を終えて部屋に戻った海里華は、古ぼけた床に純白のかけらを発見した。そっと指でつまむと、柔らかな陽だまりのぬくもりがあった。
かけらと思ったものは、大きな羽根だ。夢の終わりに舞った、あの雪のように白い羽根……。
「夢……じゃない?」
海里華は和らいでいた心と共に、表情を引き締めた。すぐさま伊世の娘でなく、水を司る精霊主としての顔になる。急いで服を着替えながら、素早く頭の中で次の行動を計算する。
相談相手に、灯真の顔が浮かんだのは、これが初めてだった。今まで緑寿の養い子という認識であったが、はたして信頼できるだろうか。
技量で言うなら灯真はもう、王城の騎士にも魔法使いにも引けを取らない。春が過ぎれば、狭間の城へ向かう、長い旅が待っている。
しかし心はどうだろうか。純粋すぎる灯真が隠し事を抱えることに、海里華はまだ不安を感じていた。
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