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 海里華はいつものように外套を着て、目立つ姿を隠している。こんな状況では、魔種への風当たりが強くなっているはずだ。今まで慣れてきたつもりではあっても、生まれ故郷での差別は辛いものだ。  その隣で、灯真の炎の色に似た赤い髪が、海風になびく。やはり、人間には珍しい髪の色だ。しかし、そのおかげでどこにいても灯真が分かる。真っすぐで恐れを知らず、人間の良心を持ち合わせた灯真を、海里華は嫌いではなかった。 「確かに、海の中に隠れ岩が多いから、東西の大陸を結ぶ海路は晴れの海には負けるわね。でも、半魚族の治める雨の海一帯は、海産物が豊富だから漁が盛んなの。あの船も外海まで出て漁をするのよ」 「昨日、宿で食べた海鮮料理も凄く美味しかった。海里華のお母さんも、屋台で料理を作ってるんだろう? 一度、食べてみたい」 「それなら、この後で行ってもいいわよ」
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