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 すでに背丈は海里華を追い越して、日々の修行の成果で逞しさを感じる。  もう対等な話し相手になれる。灯真の力強い言葉には、そんな主張が感じられた。 「……そうね。わたしはこのシュタルトの町で育った。半魚族の汐音(しおね)という女性が、生まれたばかりの私を、母さんに預けたのが始まりだったわ」  肩の力を抜いて、海里華は灯真に自分の生い立ちを語って聞かせた。  若かりし日の伊世には、恋人の漁師がいた。結婚の約束までしていたが、ある嵐の日に海で帰らぬ人になったという。それ以来悲しみに暮れた伊世は、小舟で海へ出て彼の魂を弔うようになった。  ある日海へ出ると、波間から半魚族の女性が顔を出した。  伊世は驚いたが女性は赤ん坊を抱いていた。話をすると、この子は半人半魔で海底神殿では長く生きられない、どうか地上で預かってはくれないか。汐音と名乗る者は涙ながらにそう話した。
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