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「はい……ええと、うん」 「この界隈でも、漁師になる者が多いからね。余った魚をうんと安く仕入れさせてもらっているんだよ。おかげで、下町でも皆が美味しい料理を食べられる。嬉しいことだねぇ」 「お料理、追加してもいいかな?」 「もちろんだよ!」  意外と食べるんだ。四年間も一緒にいて、新しい発見だった。王都では普段、大人に囲まれているし、旅では食料が豊富でない。拾われた身の灯真が、緑寿の前でさえ食事を遠慮していたことに、海里華は今まで思い至らなかった。  自分には伊世がいる。しかし、灯真は家族と不仲であった。  日頃、緑寿は灯真に甘いと考えていた海里華だが、そうでなければ信頼を築けないほど心が弱っていたのだ。
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