7人が本棚に入れています
本棚に追加
お品書きを渡しながら、海里華は灯真の顔を改めてよく見た。今はそんな影も消え失せて、健やかで伸び伸びと育った少年に見える。
凜として剣を振るう姿は、すでに王都の騎士にも見劣りしない。しかし本心では家庭の安らぎを求めているのだろう。
屋台で料理を始めると、灯真は遠慮がちに尋ねてきた。
「海里華は、その、シュタルトの町ではどんな暮らしをしていたのかな?」
「緑寿から聞いてるんでしょう」
「ある程度は……」
「まだ小さかった頃は、港の近くに暮らしていたわ。そしてよく人間に苛められた。買い物に行っても無視されたり、いなくなればいいのにと蔑まされたり……」
最初のコメントを投稿しよう!