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 お品書きを渡しながら、海里華は灯真の顔を改めてよく見た。今はそんな影も消え失せて、健やかで伸び伸びと育った少年に見える。  凜として剣を振るう姿は、すでに王都の騎士にも見劣りしない。しかし本心では家庭の安らぎを求めているのだろう。  屋台で料理を始めると、灯真は遠慮がちに尋ねてきた。 「海里華は、その、シュタルトの町ではどんな暮らしをしていたのかな?」 「緑寿から聞いてるんでしょう」 「ある程度は……」 「まだ小さかった頃は、港の近くに暮らしていたわ。そしてよく人間に苛められた。買い物に行っても無視されたり、いなくなればいいのにと蔑まされたり……」
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