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どこからともなく鐘の旋律が聴こえる。すでに主を失った城だ、時計の針が狂ったのかもしれない。
戦いの終わりを告げる葬送曲だ。勝利を得たというのに、青年の心は更なる絶望で占められていた。床を覆う血だまりに横たわる三人の骸は、すでに時を止めてしまっていた。
「海里華、緑寿……久遠は倒したよ、なのに僕は……」
青年が、かたく握っていた左手をゆっくりと開いた。
鋭利な刃で切り落とされた海里華の白い指は、指輪をはめたままだった。薔薇の形をした紅い石は、星の光を受けとめて静かに輝く。
守れなかった……結婚を約束したばかりだというのに。
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