序章 世界の終幕

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 世界を救う、選ばれた『精霊主(エレンシア)』。  その言葉を胸に日々修行したはずだ。なのに、力が及ばぬ情けなさに腹が立った。こんな残酷な勝利を、勝利だと呼びたくなかった。仲間を失ったうえ、世界すら救えぬというのは。  青年の心に、闇が侵食し始めていた。魔種の長である久遠が放った呪いはこれからだった。  心を蝕む毒が、ようやく効いてきたのだった。人間であるはずの彼にも、絶望よりさらに深い『(まが)つ闇』が生まれ始めていた。  手から、剣が離れた。  共に、ずっと戦いを潜り抜けてきた。自らの分身と言えるその剣を、青年は無造作に投げ捨てたのである。床に打ちつけられた金属音が、空虚な静寂に響き渡った。
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