番外編:あの約束

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番外編:あの約束

夏のある日、祖父母をうちに招いた。昼食をうちで食べたあとは、本宅へと移動してお茶にする予定だ。 「暑いからお迎えに行きますって陽翔さんが電話をくださったのは、鈴がお迎えということだったの?」 玄関で足の甲がしっかりと包まれるサンダルを履きながら祖母が少し驚いたように聞く。 「陽翔さんは今、忙しいから沖田の車で迎えに行ってって言われたの」 「今日はお休みじゃないのかい?」 「休みだよ、おじいちゃん。すぐに分かるから行こう」 不思議そうな様子のままの二人と車に乗って、うちへ戻ると 「ただいま、陽翔さん」 「おかえり、鈴。グッドタイミングだよ」 と陽翔さんがキッチンから手を上げる。 「あら…そういうこと」 「はい、こういうことでお迎えは鈴にお願いしました。どうぞ」 「嬉しいお招きだね。失礼するよ」 結婚前に彼が言っていた‘2ヶ月にひとつマスターすれば、1年で6品、5年で30品、10年で60品…もうシェフレベルだな’を実践して、今日は彼が2品を祖父母にふるまうための招待だ。
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