結婚式

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「ここも和やかで、とてもいい結婚式だったわ。おめでとう、鈴」 「ありがとう」 鈴が応えると即座にカウンターを向いた綾は、精一杯の声を掛けたということだろう。私と同じように綾もカウンセリングを受けているが、それは治療ではなく自分と向き合う作業だ。 自分の心を理解し、受け止め、コントロールや対処出来る力をつけていく。 私は娘二人と距離を置く間にカウンセリングを受け始めていたことと、好きなこと、やりがいを見つけることが出来たことで随分と客観的に自分が見えるようになると、これまでの娘二人への対応の違いに気づき、冷や汗と涙が止まらなかった。 私が泣いて後悔と懺悔をしても、それでも終わりではないと、網野先生はおっしゃった。もし今私がまた二人の娘と一緒に生活すると、綾の圧をはね除けるだけのコントロールは出来ないだろう。ただこれまでの自分を理解しただけなのだ…と。 でもそれでいい、ともおっしゃる。 出来ることを出来るだけすることで、人と人の生活は成り立っている。母親だからこうでなければ、ということはない。ただ、安易に考えたり楽をせずに、今出来ることはするというスタンスで娘二人と向き合うようにと網野先生に教わって私も実践中だ。 カウンセリング期間がまだ4ヶ月の綾には精一杯のやり取りだと思うから、あとで誉めてあげよう。 ‘とても落ち着いて自分をコントロール出来るのね。自分の気持ちが見える時は苦しいのに…綾の成長のスピードに驚いたわ’
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