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純白のウェディングドレスにブルーの小花が散りばめられた丸いブーケ。
初めて鈴に会ったイングリッシュガーデンで、彼女が好きだと言った花とあのガーデンをイメージしてオーダーしたブーケもとても似合っている。もちろん俺の胸にも、ブーケと同じ白とブルーの生花がある。
「お時間です」「扉、開けます」「ごゆっくりお進みください」
両開きのドアに手を掛けたスタッフと鈴の介添えスタッフが俺と鈴に声を掛けると
「陽翔さん、ありがとう」
鈴がそう呟いた。その真意はわからないけれど、組んでいない方の手でキュッと短く鈴の手を握ってから二人でゆっくりと腰を折る。すると今度は
「みんな、ありがとうございます」
鈴が腰を折ったまま呟いた。ああ…今すぐ鈴を抱きしめたい。その衝動は日頃聞く機会のないパイプオルガンの音で、なんとか沈静化されたのでホッとする。さっさと終わらせて二人になりたい。
そんな気持ちを微塵も出す訳がないのだが、バチッと目が合った凰には見透かされているような気がした。
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